中国の鬼神 天地神人鬼

實吉 達郎:著 不二本 蒼生:画による中国神話世界のガイドブック。
と銘打たれた書籍である。
簡単に言うと、「西遊記」「後西遊記」「封神演義」などに登場した、神仙や妖怪等を
イラストと解説でまとめたもの。感覚的に「妖怪図鑑」に近い。
代表的なところは網羅していると思うし、イラストも味があってよい。
(イラストはあのジュブナイル小説時をかける少女」の表紙を描かれた不二本 蒼生氏)
ちなみにイラストは「伝説や小説で語られた」特徴を活かしたもので、かなりの力作だろう。
好き嫌いが分かれる絵柄とは思うが、オリジナリティに溢れている。


問題は解説部分の文章である。
これが実に解り辛い文章で、読んでいて何度か混乱した。
元々中国の伝説や小説等は、独特の表現や文体なので日本語に訳するときは苦労をする。
あちらの文化に精通して、なおかつ古の文化にも詳しくないと難しいのではないか?
日本語訳されている昔の「中国伝奇もの」や「怪奇短編小説」物を読むと特にそう思う。
(有名なところで「聊斎志異」などを読んでいただければお分かりいただけるだろう)
なので、それを念頭において読んでいたのだが、それを差し引いても読み辛い。
何故かと言うと……。
「文章があまり上手ではないから」だ。
色々と細かく調べ上げていても、それを伝える方法に間違いがあるのなら全く意味がない。
(調べ上げてはいるが、それが全て正しいかどうかは不明でもある。孫悟空のモデルになった猿
の名前とか……。キンシコウだと思うのだが、実は違うのか?とか細々と)
また、「読者が知っているのを前提をして」文章書いている部分があるので、それもマイナス点。
まあ、この手の書籍は「ファン」向けであるから間違いではないかもしれないが、馴染みのない
初心者にとっては辛いだろう。
解説部分をきちんと校正して、様々な注釈を付ければ更に良いものになっていたはずだ。
残念である。


参考リンク

■實吉達郎オフィシャルサイト

■不二本蒼生常設美術館



ちなみに「實吉達郎氏」はUMAの名付け親だという。
これには南山宏氏も絡んでいるので、詳しく知りたい方は調べてみていただきたい。


中国の鬼神―天地神人鬼

中国の鬼神―天地神人鬼