日々是怪談

著者である工藤美代子氏はの肩書きは「ノンフィクション作家」といったところだろうか?
そのノンフィクション作家が書いた、怪談エッセイがこの「日々是怪談」である。
全24のエッセイに中には、日常に起こった些細な怪異から、微妙に恐ろしい話、
そしてストーカーの怖い話まで収録されている。


ノンフィクション作家が書いた怪談であるからか、淡々としている。
「あったことをあったまま」書いている…というのか。
ぎゃあぎゃあと騒ぐだけのゴシップ怪談ものとは違う感触である。
それに、女性ならではのウェット感というか、生々しさを内包した話があることも特筆して
おかねばならない。他の怪談本にはあまりないシチュエーションであろう。


「こんなことあったんだ」という何の気負いもない語り口で、あっさりと語られる怪異は
あっけらかんとしながらも、結構怖い*1
さらっと語ることで恐怖が倍増している、とでも言おうか。
怪談慣れした人ほど、この奥底に流れる恐怖を感じる事ができるのかもしれない。


しかし、驚かされるのは巻末の対談*2で、工藤氏が
「あ、でもこれ全部本当です、全然脚色していません」
と語っている事である。勘弁して下さい。この一言は卑怯です。



日々是怪談 (中公文庫)

日々是怪談 (中公文庫)

*1:読んでいる途中で、何故か加門七海氏の「怪談徒然草」を思い出した。ドコがどうとかいう話ではないが…。興味がおありの方は読み比べなどいいかもしれない。

*2:文庫版のみ収録。ハードカバー版も所有しているが、個人的には文庫版をお勧めしたい。