新耳袋 第二夜

前巻の「第一夜」が扶桑社版からの移植だとすれば、この第二夜は所謂書き下ろし版。
この第二夜からが新耳袋完全復活ということになる。
メディアファクトリー版は1998年 4月に、角川文庫版は2002年 6月発行になっている。
(ちなみにメディアファクトリー版も角川文庫版も一夜と同時発売だった)


方向性としては第一夜を踏襲したものとなっているので、第一夜と同時に読んでも違和
感がない。これは著者達が最初から狙っていた事であり、確かにその狙いは当たった。
第一夜が作り上げた「現代百物語・実話怪談集」のイメージのままの続編になったので
ある。扶桑社版からのファンは安心したのではないだろうか*1


この第二夜も、やはり上質な怪異譚が並ぶ。
中でも、「第六章 不思議を覗いた十の話」「第九章 狐狸妖怪に出会った九つの話*2
「第十一章 小さき者たちの六つの話」が新耳袋ならではのエピソードであろう。
怪談=単なる幽霊、といった形骸的なエピソードではなく、これまでなかったような怪
異を余すことなく記録(そう!記録だ)しているのである。
新耳袋スタイルはすでに第一夜・第二夜の時点で確立されていたと言えるだろう。
(要らない表現を大幅にカットする事で更にその怪異の本質を暴き出し、それでいて一
つのエピソードとして楽しめるものに仕上げているのは流石といえる)


もし、新耳袋を未読の方が居たら…いや、これから再読しようという方も第一夜・第二
夜をまとめて読んでいただきたいと思う。
「そんなことしたら、一回に200話読むことになるじゃないか!?」
と言われる向きもあろう。だが、一緒に読む事によって今まで見えなかった新耳袋の一
面が見えることだろう。
それに「一晩で百話完読したら、怪異が起こる」ならば、二倍読めばその確立も二倍に
なるかもしれない…ので、それはそれでお勧めかもしれない(笑)。

新耳袋―現代百物語〈第二夜〉

新耳袋―現代百物語〈第二夜〉

新耳袋―現代百物語〈第2夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第2夜〉 (角川文庫)

*1:あくまでも第二夜発表時の話である。

*2:余談だが、この章の最終エピソード「うずくまるもの」は第一夜の「くだん」のエピソードに深く関わっているようである。