新耳袋 第三夜

第一夜・第二夜が刊行された1998年の十月に三度刊行されたシリーズ第三弾。
文庫は2003年6月に刊行された(第四夜と同時刊行)。


復活の第一夜・第二夜と強烈な印象の第四夜との間に挟まれて、実に影の薄い本となっ
た様に思える。「大ネタがない」「全体に地味」「最終章の印象がない」等が理由とし
て挙げられるが、一粒一粒のネタは意外と上質であると思う。だけど地味で他の巻と比
べた時に、やはりパンチがない。
このことはシリーズ物としてのデメリットを体現しているだろう。
シリーズ物は、続けば続くほどこうした意見が出てくるものである。


しかし、この第三夜で特筆すべきエピソードが幾つかある。
「第七話 白装束」「第十一話 盛り塩」「第二十四話 青信号」は、明確な心霊現象につ
いて書かれていない。はっきり言って怪談であるのかどうかもわからない。
が、確実に「何か不思議だな」と思わせる話である。こういう話も新耳袋ならではだろ
う。


そして、「第六章 第三夜に関する三つの話」は怪談書籍を編む際の不可思議譚。
今はこうした話を目にすることが多いが、やはりこうしたエピソードは興味深いもので
ある。著者自らが体験した事を書くのだから、卑怯ともいえるのだが。


最終章「第十章 放送に関する八つの話」はまんま放送業界にまつわる話である。
フィルムに映り込んだり、怪音を残したりと物理的な現象に関しての話が多い。*1
この章の最後、九十九話目にあたる「たちけて」は、色んな意味でぞっとする話だ。
「怪談は世相を映す」を体現しているエピソードだろう。


有名な第四夜の前のワンクッションともいうべき第三夜だが、やはりファンは読まねば
ならない一冊だ。

新耳袋―現代百物語〈第3夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第3夜〉 (角川文庫)

*1:こうしたフィルムに残った〜などの話の信憑性に関してはここでは問わない。何故なら、都市伝説論などが絡んでくるからだ。だが、全てが全てそういったヨタ話であるという話ではない。本当に説明がつかない現象があることも世の中にはある…と個人的には思う。