新耳袋 第八夜
2003年6月にメディアファクトリーから刊行。
「この第八夜は第七夜の対になるように編み上げた*1」と著者は語っている。
どう対になっているのだろうか?その辺りを考慮しながら読み比べてみた。
第七夜はストレートな恐怖を感じる話が多く収録されているように思える。
第八夜はどちらかというと「優しい話」が多いように思えるのだが、どうだろうか?
体験者の「死者への敬い」「肉親の情」「叙情的な不思議」などが絡み合って実に優しい
雰囲気をかもし出していると思うのだ。
もちろん、中にはとても厭な怖さを持ったエピソードも収録されているので、安心して欲
しい。
ただ、問題はやはり「禁じ手の崩壊」だろう。
第八夜でも、「祟り・呪い・因果・因縁」が関係したエピソードが収録されているのだ。
文章中に「○○が祟っている」や「呪われた」などの言葉が出ていないだけで、どう読ん
でも禁じ手はあってないようなものに成り下がっているのが残念である。
また文章は第七夜よりも理解しやすくなっているのに安心した。それでも、まだ少し引っ
掛かる部分があるが……。
読まれた方はご存知の通り、今回の章立てはたった三つである。
「第一章 新耳袋にまつわる話」「第二章 外にまつわる話」「第三章 内にまつわる話」
の三つだ。第一章が六話、第二章が二十五話、残る六十八話が第三章だ*2。
最後の章にこれだけの分量の話を収録されている理由は本編を参照していただきたい。
第三章を読むと分かるが、ある法則にしたがって編集されている。
単に「話数」と「章立てを省いた」だけではないことが分かるだろう。
自分で「〜まつわる話」など考えながら読むのも楽しいものである。
後半、八十五話から始まる話(大まかに分けて三つのエピソード)が第八夜の肝であると同
時に問題点でもある。これは読者諸氏が読んだ上で判断していただきたい*3
。
第八夜は第七夜と良くも悪くもいろいろな意味で対になっている。
それなりに楽しんで読めたことが嬉しい。
続く第九夜は……?
- 作者: 木原浩勝,中山市朗
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2003/06/02
- メディア: 単行本
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