怖すぎる話 本当にあった超怪奇譚

二〇〇五年七月五日初版発行。


さたな きあ氏、一年ぶりの新刊である。
毎回タイトルが楽しみだが、今回はこんな感じだった*1
毎度おなじみの「文体」と「オチ」で安心して読めるB級怪談文庫である。
もちろんB級というのは褒め言葉(?)だと思っていただきたい。
ここでいうB級というのは、「A級には成りきれないが、結構良質なもの」という意味合
いを含んでいるのだ。



皆様もご存知の通り、さたな きあ氏の文体には癖がある。
――――や、…………等を多用し、独特の言い回しをしながら、途中起こった事や最後の
オチ部分がはっきりとしない書き方をする。
これがさたな きあ流の怪談文体なのだ、と私は思う。
焦点のぼやけた表現で、逆に読み手の想像を刺激する…という具合だろうか?
怪談を書く場合の文体として、これも正しい選択肢であろう。


だがしかし、どうにもこうにもこの辺りがさたな きあ氏の弱点でもある。
朦朧とした印象は最後まで変わらず、「ふ〜ん」で終わってしまう。
何も妙な演出をしろと言っている訳ではない。
どこかに「焦点」が必要なのではないか、と思うのだ。
妙に間延びした感じも受ける事がある氏の文体だと、せっかくの怪異の衝撃が薄くなって
しまう。
今までのスタイルを捨てろとは言わないが、工夫の余地があるだろう。
この弱点を克服した時に大化けする可能性もあると思うのだが……。


肝心の内容だが、「可もなく不可もなく」という印象だった。
恐怖度はそんなに高くなく、先が読める展開*2の怪談書籍といえる。
けれど、その辺の手抜き怪談書籍*3に比べれば雲泥の差があるだろう。


ずっと、怪談界の中堅を走る続けるさたな きあ氏の新刊「怖すぎる話」。
ファンや怪談マニアは買い、である。

怖すぎる話―本当にあった超怪奇譚 (ワニ文庫)

怖すぎる話―本当にあった超怪奇譚 (ワニ文庫)

*1:途中に挿入される「都市伝説異聞」という掌編は、そこまで「都市伝説」然としたものではなく、単に「都市伝説」という言葉を使いたかっただけの様な気もする。タイトルに関するセンスは…………、と言わざるを得ない(笑)。

*2:おまけに、途中挿入される小見出しでネタバレがあったりする。

*3:季節商品として割り切ったものや、流行に乗ろうとした志の低い書籍は未だ存在する。