日本幻獣図説

湯本豪一氏による「幻獣(妖怪にあらず)」本。
豊富な図版と的を得た説明文は資料本として役に立つのでは?


1章は「幻獣名鑑」。
「河童・鬼・天狗・人魚・龍・雷獣」などの有名どころがまとめてある。
2章は「予言する幻獣」。
かの「件」や「アマビコ」等の予言をするものたちについて書かれている。
この「アマビコ」の図版がイカス(笑)。
3章は「記録の中の幻獣」。
江戸・明治時代の報道関連の視点と、デザインについて。
氏の他の著作でもおなじみの章でもある。
4章は「幻獣の背景」。
これはそのままの意味である。


凄いのは全く押し付けがましさがない点だ。
これはまえがきである「はじめに―幻獣とはなにか」を読んでくだされば分かるだろう。
「是か非か」「居るのか居ないのか」両極端でデジタルな思考をする研究者にはない、柔軟
かつ真摯な姿勢に思わず頷いてしまう。
ただヒステリックに「脳内」がどうとか、「捏造」だとか、「心霊的に」とかそういった
自分を殻に閉じ込めるような発言をするよりも、こういう自然な立ち位置での発言の方が
実に説得力がある。この辺りは某研究家にも見習ってほしいものだ(笑)。


ただなんとなくページを繰って図版を見るのも楽しく、真剣に読み込んでも面白い一冊だろう。

日本幻獣図説

日本幻獣図説