文藝百物語

怪談書籍のお話。


この本は、ネット等で調べもの中に出会った一冊。
元来怪談集が好きな身なので、存在を知ったその日
のうちに書店にて購入。きっちり初版。
角川ホラー文庫版なので、文庫版書き下ろしが入ってお得!
ていうかオリジナル版もいつか買おう。
でも文庫の方がいつでも何処でも読みやすいから
怪談集としては文庫の方が好み、かな。

さて、この「文藝百物語」(東雅夫:編)とは如何なる怪談書籍なのか?
簡単に言えば「ホラー作家を集めて百物語を行ってもらい、そこで語られた怪談を書籍化したもの」だ。参加した作家諸氏は以下の通り(敬称略)。


井上雅彦
加門七海
・菊池秀行
篠田節子
霜島ケイ
竹内義和
田中文雄
・森真沙子


よく考えてみると凄い顔ぶれである。異形でうわさの神仏で
魔界都市でジハードで封殺鬼でサイキックで邪神で邪視っていう。
でもここではネームバリューよりも語った話の内容が重要なのである。


百物語の名の通り、きちんと百話(九十九話+百話目に代えて)収録してあるのが
ポイント高い。これを一晩で読めばあなたも私も一人百物語が可能なのだ。
…けど、実は全然心霊譚ではない話(勘違いだったとか、実はこういうネタだったとか)
が入っているので、完全な百物語ではないのかもしれない。
それが問題と言うのではない。それを含めて「文藝百物語」なのだ、と思う。
「怪談語るぞ!」といいつつ、色んな話をしながら雑談的に色んな話が飛び交う…。
実際の百物語もこういう雰囲気ではないだろうか?
このライブ感は中々普通の怪談書籍にはないだろう。
百物語ファン(いるのか?)は必読!


んで、ここからは第一限から最終限それぞれの中から特筆すべき話を
ピックアップしていこう。


・第一限
チャルメラの音が」「ついてくる笑い声」が面白い。枯れ尾花的な内容だけど。
それと「お坊さんが車内を」「一つ目の坊主、河童の写真」が好きだ。
・第二限
「追いかけられて」は、シチュエーションを考えると怖い。
「仏像徘徊」でなるほど、とうなづいて、「人形嫌い」であるあるある…となる。
人形の話は怖い…。
・第三限
「三角屋敷の怪」は、加門七海氏が完全版を発表しているが、こちらは霜島ケイ氏自らが
語ったバージョン。住んだ者視点の話なのが興味深い。
「鬼伝説の山で」は有名な山の牧場竹内義和氏版。色々問題があった話なのだ。
・第四限
「無駄だよ」これは怖い。よくある話かと思いきや、厭な話なのだ。
・第五限
ベトナム心霊ツアー」「起きろ!ガチャッ」「軍人の夢」
この三つをまとめて読む事をお勧めする。
・第六限
「続・Kは恐怖のK」が興味深い。感じる人と感じない人の違いが(笑)。
「宿坊の一夜」「のっぺらぼう」が色んな意味で好き…かもしれない。
・第七限
「全校生徒が合掌して」…これはー(笑)都市伝説では?
でも、こういう風に伝わっていくのだなぁ、と面白い。
「奈良のオシラサマの話」がぞっとする話。
・第八限
「お稲荷さんの霊威」「取り憑かれた姉」はとても厭な話。
「繰り返す『四谷怪談』」もぞーッとする。偶然?いや…と言う話。
・第九限
「落とした話」で笑ってしまった(笑)。ああ、一服の清涼剤。
「ベッドの下でパタパタパタ」…絶対、厭。
「自分の顔」おー。
・最終限
「神棚の顔」…これが最後の話。それだけに怖い。もちろん、内容も。


全体を見ると「新耳袋」や他書籍に掲載されている話や、都市伝説が混じっているのが分かる。それでも、充分怖いのだから、やはり怪談は語りであるな…と言うことだ。
もし「文藝百物語2」があるなら、是非読みたい。
その時はホラー作家の方たち以外の全く関係ないジャンルの作家などの話も読んでみたい。
そう思う。