幻獣ムベンベを追え

未確認生物も好きな私としては、この書籍を紹介しておきたい。

これは「早稲田大学探検部」の未確認生物<モケーレ・ムベンベ(コンゴドラゴン)>捜索記録の書である。所謂探検記、ともいえるだろう。

モケーレ・ムベンベはアフリカ・コンゴの奥地にあるテレ湖に潜んでいる、という未確認生物で、恐竜の生き残りではないか、と言われているものである。
現地住民がムベンベを罠にかけて殺し、それを解体して喰ったら、毒の為か村が全滅したとかなんとか。レガスターズ探検隊は長い首の怪物を直に見たとかなんとか。
兎に角まだ誰もその招待を見極めたものがいない生物である。
それを探しにいってしまった大学生の話が、「幻獣ムベンベを追え」なのだ。


この書籍の凄いところは、「嘘・偽りのなさ」である。
自分達で行って、自分達で行動して、自分達が感じた事を書いているだけのことなのだが、これが実に真っ当でよいのだ。嘘・大げさ・紛らわしい、が当たり前のような書籍は恥ずべきである。
まず、10〜15メートルくらいあるはずの生物が潜んでいるはずの湖の深度は2〜3メートルであった。ぺったりと伏せていれば隠れられるかもしれないが、そういうわけにも行くまい。
そしてテレ湖に流れ込んでいる川からやってきているのでは?という仮説にそって調査をしたが、河口の小ささ・川の長さから、それの確立は低い、となった。
現地の目撃者に聞いても「黒いものが浮かんでた」とか曖昧であるのに、絵に描いてもらうと立派な恐竜の絵になる(別の書籍によれば、他の探検隊のインプットが悪かったのではないか、と言われている。もしくはサービスなのか!?また、正体はサイだともいわれているが…?)。このように実にはっきりとした結果が出ているのだ。他のインチキ書籍には真似できない内容だ。


だったら、読む意味ないじゃないか、と思う事なかれ。
彼ら探検部の行動の記録として、これほど面白いものはない。
旅程・食事や病気・トラブル、全てがまさに探検記として素晴らしいエピソードで彩られている。日本に居ながらにして、コンゴの奥地を体験できるほどの臨場感は特筆すべきだろう。


彼らの探検は無駄ではなかった。
このような素晴らしい探検記を生み出したのだから。

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)