木槌の誘い 壱

現代の妖怪(←褒め言葉)、水木しげる大先生のコミック。
あの『稲生物怪録』をベースに、水木ワールドを展開する怪作である。
何故今頃取り上げるのかと言うと、ここには水木大先生の「妖怪・精霊・神」の捉え方の
一端が垣間見える良作で、是非紹介しておきたいと思ったからである。
ネタ切れとかそういうことではない(笑)。


まず、「稲生物怪録」とはなんなのか。
広島県の三次(みよし)藩の藩士稲生平太郎、のちの武太夫が十六歳の頃体験した、約
一ヶ月に及ぶ怪奇体験記録である。
『いまから、二百五十年ばかり前に、広島県の三次に現れた妖怪は、連続で、しかも集団
で現れるという珍しい現象であった』(作中から引用)
というから、中々珍しい妖怪出現記録になるだろう。
詳しくはこちらのサイトを参照していただきたい。


この壱(一巻)では、稲生物怪録の内容が大まかに描かれる。
いつもの水木漫画の体裁であるが、どちらかというと抑え目の表現をしているようだ。
問題は、冒頭と最後。
ここで水木大先生の主観を交えた意見が描かれている。
『妖怪の一匹や二匹いたって何も騒ぐ事はない。あたりまえのことなのだ。ただ人間が気
づかないだけのことなのだ』とかましつつ、後半『霊学』についての話をアリャマタコリ
ャマタ先生(荒俣宏氏)を交え展開していく。
この下りがとんでもなく飛躍していているが、読んでいて実に面白い。
内容に関して議論をするのさえアホらしくなるほどの『水木大先生理論』は、読者の予想
をはるか彼方に飛び越えて展開していくのである。


『霊学とは?』『木槌の役割とは?』
全ての謎が解き明かされる(?)弐巻の感想は、近日公開予定。
全国の水木ファンからお叱りを受けるかもしれないが、お許しいただきたい。