真夜中の手紙 怪奇探偵の超常レポート

学研から刊行された、怪奇探偵・小池壮彦氏の単行本である。
購入後、何の予備知識もなしに中をパラパラと確認したら、少し驚いた。
何に驚いたかと言うと「フォントの大きさ」にである。
「異界の扉」の時もそう思ったが、今回は更にそれが顕著なのだ。
フォントが大きい=あまり沢山の話が収録されていないのでは?
と少し不安になる。
それを確認しようと目次を見ると、やはり少ない。
ルポルタージュを含めても16編しかないのだ。
「なんだ」と読み出したのだが……。


なんとなんと、これがかなり濃い内容だった。


まず、「真夜中の手紙」だが、これは学研「ムー」の連載をまとめたものだろう。
書籍全体で「01〜03」の3パートに分かれている。
このパートは氏の著作である「異界の扉」「幽霊物件案内」を思わせる。
「真夜中の手紙」は、怪奇探偵の元に舞い込む「メール・手紙」から始まるレポートなの
だが、これが想像もつかない展開の怪奇現象の連続で、眩暈がしてくる。
決して悪い意味ではない。
怪談・怪奇好きなら、垂涎の内容なのだ。
ビデオという電気製品を通した怪奇であったり、人の業が生み出す怪奇であったりと様々。
淡々とした小池氏のルポルタージュ風の文章。
三者的な雰囲気で淡々と書かれた一連の怪奇は、行間から禍々しい瘴気が立ち上ってく
る様に感じるほど。
怪談ファンは一読の価値あり、だろう。


その「真夜中の手紙」に対抗するかの様に収録されているのが「怪奇ルポルタージュ」だ。
これも3パートに分かれている。これも『ムー』に連載されていたものの、加筆修正版。
氏の「怪奇探偵」の名前を最も表したパートで、所謂「怪奇探偵の実録事件ファイル」の
流れを汲むものだろう。
世の中の心霊事件や怪奇現象の成立を冷静に調べ上げ、ルポする、というのは小池氏なら
ではのパートである。
ここも実に濃い内容で、心霊事件に興味があればあるほど興味深い内容だろう。
(『伊勢神トンネル*1』『羽田の大鳥居*2』『ホテルニュージャパン*3』の有名心霊スポット三
箇所についてのルポルタージュなので、これらに興味のある方は是非)


そして、今回収録された中で、一番異色なのがこれだ。
「暗黒取材ノート」1〜3
これは、小池氏が取材中に出会った「裏ネタの記録」のらしい。
氏自身が「おまけ」と称しているパートだが……。
例えるなら「サイコ系」の話だろう。
心霊ではなく、人間の業が元になった話と思っていただきたい。
小池氏ならではの切り口は健在。
怖いというより「嫌悪感」を感じる事請け合いだろう。


と、いった感じで3パートに分かれている事がこれでお分かりいただけただろうが、実は
この3パートが有機的に絡み合いながら一つの流れを作り出している部分に注目していた
だきたい。それぞれのパートがそれぞれに干渉しあって、新しい味を作り上げている、と
いえる。全てのパートに存在する意味があるのだ。


実は、一粒で三度美味しい、というのが、この「真夜中の手紙」。
小池壮彦氏ファンなら読んでおかないと損である。

真夜中の手紙

真夜中の手紙

*1:ダムド・ファイルでも有名。

*2:羽田の大鳥居に関する<祟り>は「戦後」「昭和」「平成」の三つに分ける事が出来る…と思うのは私だけだろうか。

*3:暗黒取材ノート3とリンク。