新耳袋 第四夜
新耳袋の中で一番話題に上るのは、この「第四夜」ではないだろうか?
第一夜から第三夜にかけての流れを一新するかのような一冊である。
(メディアファクトリー版は1999年6月、角川文庫版は2003年6月に刊行)
この第四夜までが、真の「新耳袋」である、と個人的には思う*1。
異論があろうがなかろうが、とりあえずここで一区切り、といったところだろう。
この第四夜はネタも中々揃っていれば、文章も理解しやすく「実話怪談集」として高い
レベルの書籍であろう。中には「夢」の一言で片付けられそうな話や「勘違い」「都市
伝説では?」といったものあるが…それはそれ、と置いておこう。
第五話から三話続きの「実家に住むもの」、「第十五話 メロンの匂い」「第二十話
二階の部屋」「第二十二話 こんにちは」「第六章 狐狸妖怪を見たという十の話」
「第四十五話 動かすなっ!」「第五十三話 八甲田山*2」「第五十六話 昨夜の子」
「第九章 不思議を感じた十の話」「第七十九話 だまってろ!」等は、文句なくお勧
めできるエピソードである。
それよりも問題はこれ以降の章にある。
「第十一章 UFOの八つの話」「第十二章 山の牧場にまつわる十の話*3」
この二つの章の為に、この第四夜は存在すると言っても過言ではないだろう。
第十一章をまるまる第十二章の導入部に当てている…という著者の言葉を借りれば、第
十一章・第十二章の十八話で一つの章である*4、と言えるかもしれない。
兎に角、この二つの章は新耳袋でも異質な感触のエピソードがまとめられている。
「UFO」「ブラックメン*5」「精神的嫌悪感」「不条理」といったキーワードが繋が
る事によって、これまでにない「怪談」が生み出されたと言っても過言ではないだろう。
代わりに、新耳袋には新たな負債を抱え込む事になったのだが。
この第四夜。
メディアファクトリー版と角川文庫版、どちらを買えばよいのだろうか?
メディアファクトリー版ならではの「カバーを外す楽しみ*6」と文庫版の「山の牧場に
加筆された部分*7」のどちらも捨て難い。
マニアなら、両方手に入れておかねばならないだろう。
さて、「山の牧場」をリポートしたサイトがあるので、蛇足的にリンクを無断でしておく(笑)。
- 作者: 木原浩勝,中山市朗
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 1999/06
- メディア: 単行本
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- 作者: 木原浩勝,中山市朗
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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*1:怪談之怪の活動が始まった頃からおかしくなってきた、と思うのは勘繰りすぎか。
*2:八甲田山周辺の都市伝説と言われることもある。新耳袋に収録する際、最後の部分を封印したそうだが…。
*3:いろいろな所で誤解があるが、これは中山市朗氏の体験談。木原浩勝氏の体験談や竹内義和氏の体験談ではない。(竹内氏ヴァージョンは「文藝百物語・鬼伝説の山で」で読める)
*4:前々から思っているのだが、一話分の怪談を何話分にも分割するのは新耳袋ならではの方法。水増し感があるので、止めた方が良い…と思う。
*5:「メン・イン・ブラック」のこと。都市伝説っぽい。
*6:文庫は巻末にモノクロで掲載。こちらはカラー。
*7:それと、文庫版あとがき部分も重要。