怪談は、誰のもの?

某所にて話題になっている「怪談の著作権」。
発端は、中山市朗氏(新耳袋著者の一人)が主催する「怪談夜話」の体験談募集。
『怪談夜話』
怪談夜話自体は、「怪談を聞く側から語る側になりませんか?」というイベント。
事前に打ち合わせをして、壇上で体験者自らが語る、といったものらしいです。
企画としては面白いと思いますし、怪談はやはり語りありきだと思っています。
しかし、問題となった一文は以下の通り。

※提供して頂いたお話についての著作権は「怪談夜話」が保有する事になります。

そう、体験者が語った怪談の著作権は(C)Kaidanyawaに移動します。
こういった権利関係については詳しくありませんが、ちょっとどうかな?と思いました。
著作権については下のリンクを参照の事)
著作権情報センター
調べていくと結構曖昧なんですねー、著作権


実話怪談の場合「体験談」が創作じゃない限り、そこに著作権は発生しないと思うんですよ、個人的には。
もちろん、語りをDVDやCDにしたりすれば、それは「著作物」になり著作権も発生するでしょう。
しかし、怪談夜話は話の内容自体に「著作権」を発生させて、管理しようとしてます。
単なる予想ですが、怪談夜話の主張する「語られた怪談は怪談夜話に著作権」発言は、
「他所で営利目的利用」をさせない為の予防線を張ったのではないか?、と思うのです。
他の怪談著者や体験者が「怪談夜話で語った怪談」を営利目的で使う事を禁じておけば、何らかの抑止力になる、と踏んだのでしょう。
(今でもいざこざのある稲川氏の一件も関係しているのでしょうが……)
結構な力技ですね(笑)。


例えば、Aさんが体験した話をBさんが怪談夜話で語ったとしましょう。
その時点で「(C)怪談夜話」になってしまいます。
が、Aさんはそれを知らなかった。
そんな状態でAさんが自分でその体験談を本にしてしまった、とすると……?
怪談夜話から「その話の著作権は怪談夜話にある!書籍の回収&謝罪文の掲載・賠償金だ!」
と主張できるわけです。
ですが、Aさんはこう主張するでしょう。
「これは自分の体験であり、文章は自分で一から書いたものだ。著作権は自分にある」と。
それでも、怪談夜話側はそんな主張を突っぱねる事でしょう。
「サイトとか見るように。怪談夜話で語る=著作権の譲渡を認めるということだ」と言う風に。
しかし語ったのはBさんです。さて、この場合はどうなるのでしょう?


また、これだと怪談のオチが被っただけでも、著作権侵害の主張が出来る事になりますね。
「最後の<黒い影がすっと消えた>というのは、うちの著作物の中にある<黒い影が消えた>という話のオチに酷似している!」
と言う風な(笑)。いや、笑い事ではなく、真剣にありそうで怖いんですが……。
(怪談夜話の著作権云々を「あり」と考えると、話の提供者は<著作権>を主張できるようになるんですよね。普通はしませんが)




実話怪談書籍の場合、「著作権がどこで発生するか・どこに発生するか」が重要です。


1)怪異が起こった
2)その体験を実話怪談著者に送るor語る。
3)著者が体験者を取材する
4)著者が文章に起こす ※多分ここで著作物と認識される。
5)編集などした後、販売
6)提供者に謝礼として献本など


実話怪談の場合、著作権が発生するのは主に「文章」に対してです。
作家が「聞いた話を書き起こした時点」で、その文章自体に著作権が発生します。
逆に話の内容に関して著作権を主張するのは難しいのでしょう。
(発売前・後に話のネタばらしをするのは営業妨害に当たるようですが)
ということは
『同じ体験者から、同じ話を聞いて、別々の著者が文章化して本を出してもOK!』
なんですよね。極論ですが(笑)。


それを踏まえると、実話怪談本は「ルポルタージュ」本だと認識した方が良いようです。
上の1)を事件が起こった、とかに差し替えてみてください。色々共通項が見つかるはずです。
(「実話怪談本=ルポ本」だとすると「語られた体験談」に著作権を発生させるのは問題あり、と思うのですが…)


著作権で思い出しましたが、あの山口敏太郎氏のサイト「妖怪王」には、確かこんな一文が。
「この掲示板に書き込まれた内容・文章の著作権はサイト妖怪王に帰属します」(うろおぼえ)
ということは、書き込んだ時点で著者は著作権を譲渡することになるんですねぇ。
これもやはり怪談夜話と同じで「予防線」なのでしょう。
だから「投稿された文章をそのまま転載して本を出し」ても問題じゃないのです。
問題ではないのですが…(苦笑)。言いたいことは察してください(爆笑)。
中山氏の場合も山口氏の場合も「占有」という言葉ががキーワードになりそうですが……。


こういった「怪談(の内容)の占有」が起こった場合はどういう問題が起こりうるでしょうか?
そして、そこまでされて体験者が話を積極的に提供するでしょうか?
実話怪談書籍の未来を狭める結果にならないでしょうか?


これからの実話怪談界は「著作権」が良くも悪くも重要なファクターになりそうです。